発酵ギーはインドの幻か?!

My first attempt at making ghee from homemade malai curd

「何でも手作り派」では決してないのですが、ギーだけはホームメイドを心がけています。というのは、あのうっとりするような香しさの至福は市販のギーでは味わえないから。しかも、無塩バターを火にかけるだけでできてしまう手軽さも面倒臭がりの私にぴったり。

先日、ギーを巡る記事を読んで、伝統的なギーには大きく分けてマライ(クリーム)ギーとヨーグルトギーの二種類あることを知りました。

★The Untold Story of Indian Ghee
http://www.goyajournal.in/blog/the-untold-story-of-indian-ghee

この記事によれば、ヒマーチャル・プラデーシュ州の奥地、チベットに近い砂漠の谷Spiti Valleyでは、ヤクの乳を加熱しないで自然発酵させた発酵乳(ヨーグルト)から発酵バターを作り、(加熱せずに?)ヨーグルトギーにしているそうです。そのヨーグルトギーは、バターミルクの(酸味のある?)乳臭さ、チーズのようなピリッとした刺激臭、さらにブルーチーズの臭いの成分である2-ヘプタノンまでかすかに感じられる複雑なアロマを併せ持つ代物だとか。気になりますよね。ただ、ヨーグルトギーは糖分が少ないため、バターを加熱してつくるマライギーの馥郁たるナッティな香ばしさはないとのこと。

これを読んでふと思い出したのが、10年来追い続けているある謎。古代インドの文献、あの『カーマスートラ』に出てくるギーを表す二つのサンスクリット語の言葉、「sarpis」と「ghrta」の違いに通じるのではないかということ。この二つの言葉は、どちらも今では「ギー」とされていて違いがはっきりしていません。でも、カーマスートラの秘密のレシピには、この二つ両方を使う料理があるので、別物だと私は思っています。「sarpis」は仏教を通じて日本にも渡り、「醍醐」として伝わっているようなのですが、その「醍醐は発酵ギーなのではないか」という仮説が立てられており、個人的にもそうであってほしいと思ってきました。そんなわけで、Spiti Valleyのヨーグルトギーがsaprisなのでは?と期待が高まります。ただ、インドでは、発酵食品はあまり良いものだとされていないせいか、以前アーユルヴェーダのドクターにsapis=発酵ギーの仮説を話してみたところ、数日経って「すごく面白いと思って考えてみたけど、発酵ギーはやっぱりあり得ない」との答えが返ってきました。でも、伝統的なギーは発酵バターからつくられているわけだし(詳しくは後述)、どんな病気も治すとされる100年もの(!)のギー”Pra-purana Ghritham”なんかは、発酵してるとか思えないんですけどね。

そんな話をSNSで書いたところ、ヨーグルトギーとマライギーのいいとこ取りのようなギーの話を教えていただきました。冷蔵庫が登場するまでインドの各家庭で作り続けられてきたはずのギーです。ミルクを沸かせて上に浮いたマライ(クリーム)をとり、そこにヨーグルトを一さじ加えてマライを毎日追加し、ある程度の量が集まったら攪拌して発酵バターにし、それを加熱してギーにするのです。

それはいい話を聞いたと、さっそくマライ&ヨーグルトギーを作ることにしたのですが、せっかちな私は何日も待てないと市販のフルクリームを使い、その上ミキサーと氷を駆使してバターにし、できたのが写真のギーです。カラメルのような香しいフレイバーにかすかな酸味が相まって、これは素晴らしい!

ヨーグルトギーの話に戻りますが、マライ&ヨーグルトギーを教えてくださった大先生によれば、銀の容器にミルクを入れておくと加熱しなくても自然にヨーグルトになるという話をアーユルヴェーダのドクターからお聞きになられたことがあるそうです。これまた興味深いですね。また、「Pãli聖典における乳加工関連の定型句について」という論文の中には、インドボダイジュの容器や皮の袋に生乳を入れてヨーグルトにしたり、ヨーグルトを入れた袋を馬に結び付けて飛び跳ねてもらって攪拌してバターにするなどワクワクするようなことがあれこれ書かれています。試せるものなら試してみたい!(笑)

さて、南インドのギー事情にも少し触れておきましょう。12/1のThe Hindu紙 METROPLUSにタミルナードゥ州ラーシプラム(Rasipuram)の伝統的なギーを紹介する記事が出ていました。

★An aroma of nostalgia
http://www.thehindu.com/todays-paper/tp-features/tp-metroplus/an-aroma-of-nostalgia/article21237524.ece

 

これによれば、ギーにロックソルトを加えてバターミルクの酸味を取り除き(もったいない!)、さらにドラムスティックの葉(モリンガの葉)を天然の保存料として加えるそうです。ドラムスティックの葉に関しては各方面から聞いていたのですが、あのちょっと抹茶のような香りがギーに風味を添えるのでしょうか。

ラーシプラムの近郊には西ガッツ山脈の一部であるKolli Hillsと呼ばれる高地があり、その草を餌とする牛の乳がギーの材料となるので味がよく、さらに伝統的に薪や(素焼きの?)土鍋を使うので香り高いギーとなるとか。また、バターも名産であり、それは今でも冷蔵庫でなく水につけて保存されていると言うから、乳製品好きとしては気になる土地です。

あー、ギーを巡る旅の予定を立てないと!

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